白川義員追悼写真展『天地創造』

世界の自然と伝統と人

生涯で最も感銘した写真集として、昨年の11月に白川義員氏の『永遠の日本』を紹介したが、出身地の愛媛県立美術館で追悼展が開催されているのを知り、矢も楯もたまらず行ってきた。追悼展のタイトルは、先に紹介した『永遠の日本』の次の写真集で遺作となった第12作の『天地創造』で、思想信条的に強調されたのは「前人未踏」だった。

先の投稿で紹介した通り、白川氏の撮影における基本理念は「地球再発見による人間性回復」であったが、『永遠の日本』はそれの日本版で「日本再発見による日本人の魂の復興へ」がテーマであった。そして基本理念にはもう一本重要な柱があった。それが「前人未踏を往く」である。以下、目録から抜粋する。

――――――――― 抜粋 ―――――――――――

当時は終戦直後で、外国で作られた売れる物を人件費が安かった日本がすぐに真似をして同じ物を作って半値で輸出して外国の企業を片端から潰したのである。だからヨーロッパ・アルプスを撮影中日本人と分かると突然バケツで頭から水をぶっかけられる。雑魚寝の山小屋では満杯でも誰も私に近寄らない。当時の日本人は豚以下の鬼畜だったのである。当時20代で、これらの度の過ぎた屈辱が骨身にしみて、一念発起した。白人共が1000人束になってかかって来ても東洋のこの豚一匹に絶対勝てない事実を事実をもって証明してやると心に誓った。それから58年間に『アルプス』から始まり最後の『天地創造』まで12作を完成させた。

ところで『アルプス』がなぜ前人未踏なのか。私の『アルプス』は日の出や日没の太陽を受けて真赤や黄金色に輝く写真で占めているが、当時アルプスに限らず普通の風景や人物写真も含めて赤や黄色い写真はこの世界に1点たりともなかった。だから氏の『アルプス』は写真の世界に革命を起こした貴重な事件であるとされた。

これで予定の12作が完成した。エベレストを空撮中、乱気流にたたかれて飛行機が墜落し頸椎がバラバラになって砕けたり、重なる高山病で片肺を失ったり幾度も半分以上死んだが、生き返ったのはひとえに神の御加護の賜物である。ご支援いただいた皆様に深甚な心からの感謝と謝礼を申し上げる。

――――――――― 抜粋おわり ―――――――――――

巻頭の写真は、アメリカのバーミリオン・クリフ国定公園にある、岩山のほとんどが赤と白の2色で出来上がっている実にめずらしい山々で、このザ・ウェーブという岩山は1日20人しか入域が許されない事で有名。まさに聖地だった。

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