出口治明『還暦からの底力-歴史・人・旅に学ぶ生き方』

大分前に読んだのだが、改めてパラパラめくり引っかかったところを箇条書きにしておきたい。

歴史をひも解けば、還暦後に底力を発揮した人は列挙にいとまがない。重要なポイントは色眼鏡(その人の価値観や人生観)をできるだけ外して、フラットに周囲の物事を見ること。「数字・ファクト・ロジック」で、エピソードでなくエビデンス(証拠)で世界を見ること。もう一つ重要なのが、健康寿命を延ばすこと。

高齢者が生かされている歴史的・生物学的意味は「次世代のために働くこと」(本川達雄『生物学的文明論』より)

たくさんの人に会い、たくさんの本を読み、いろいろなところに出かけて行って刺激を受ける、つまり「人・本・旅」の高学歴社会へと切り替えなければならない。

変化が激しく将来の見通しが立てにくい世界で必要なのは、物事を根底から捉える探求力。問いを立てる力。何が起こっても自分の頭で物事を根底から考え、自分の言葉で意見をいえる能力。

人生で大切なのは、何といってもパートナーや気のおけない友人たちと過ごす時間であり、自分が好きなことをする時間。

人は何のために生きるのか、前述した通り、次の世代のために生きているに決まっている。具体的には「世界経営計画のサブシステムを担う」こと。つまり人間は「自分の周囲の世界をより生きやすいように変えたい(経営したい)」という思い(計画)を持っている。ただ人間は一人ですべてを変えることはできない。一人ひとりにできることは「サブシステム」を担うことだけ。今のポジションで担える部分を受け持ち、世界をよりよく変えるために貢献していくしかありません。

言い方を変えれば、人間は自分の好きなように生きればいいのです。そもそも嫌いなことは長続きしないし、人間の理想は好きなことをしてご飯が食べられることです。人間は次の世代のために生きていると理解したうえで、それぞれが好きなことをして一所懸命生きればそれで十分なのです。

人間の考えは「人・本・旅」の累積が形作るが、そうやってインプットした個々の知識を「タテヨコ算数」で整理して全体像をつかんでいくことが大切。「タテ」とは時間軸・歴史軸のこと。「ヨコ」は空間軸、世界軸。算数はデータで物事をとらえること。数字、ファクト、ロジックと言い換えることもできる。

考える力を養うには、最初は考える力の高い人の真似から入り、試行錯誤を繰り返しながら自分のものにしていく。具体的には歴史的に長く読み継がれてきた古典を読み込んで、その人の思考のパターンや発想の型を真似ていく。先人の思考のプロセスの追体験から始めるのです。

次世代のため社会の持続可能性を考えると、少子化対策は必要不可欠。人口減少の一番の原因は出生率の低さ。その根底には男女差別が存在し、育児のみならず家事、介護が全部女性の手に委ねられているから。男女差別をなくすにはクオーター制の導入が一番。クオーター制とは、例えば議会における政治家や企業の経営者に、男女の比率に偏りが生じないように一定の割合を義務付ける制度。

赤ちゃんを産んでも女性が経済的に困らない仕組みや社会保障と税の一体改革は必要不可欠。

20世紀を代表するファッションデザイナーであるココ・シャネルは、孤児院と修道院で育ち、キャリアはお針子からのスタートでした。次のような趣旨の言葉を残している。「私のような大学も出ていない年を取った無知な女でも、まだ道端に咲いている花の名前を1日に一つぐらいは覚えることができる。一つの名前を知れば、世界の謎が一つ解けたことになる。その分だけ人生と世界は単純になっていく。だからこそ人生は楽しく、生きることは素晴らしい。」若い才能が次々に登場してくる世界で長期にわたってトップランナーとしての地位を維持できたのは、学ぶことをやめなかったから。

(最後にもう一度)好きなことをやる、あるいはやれること。人間の幸せはそれに尽きます。「人・本・旅」でいろいろな人に会い、いろいろな本を読み、いろいろなところに出かけて行って刺激を受けたらたくさんの学びが得られ、その分人生は楽しくなります。

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