2/5(土)14:00~17:20に弘前大学人文社会科学部地域未来創生センターフォーラム『自然栽培を学問する』が、Z00M開催されたので参加した。僕が自然栽培を始めた原点は「奇跡のリンゴ」の木村秋則さんなので、自然栽培を原理的に解明し普及しようと活動されている研究グループの存在は頼もしく有難い。当フォーラムでは新たな気づきや確信が得られたので、簡単に紹介したい。
フォーラムは3人の講演がメインで、1人目は木村秋則さん、2人目は粕渕辰昭さん、3人目は杉山修一さん。1人目の木村秋則さんについては2年前の今頃『nico10周年祭り』で話されたこととかぶるところが多いので今回は省略させていただき、2人の講演をまとめておきたい。
粕渕辰昭(山形大学名誉教授) 【江戸時代に学ぶ多数回中高除草の13年―除草ではなく中耕だった―】
最初、片野学『自然農法のイネつくり』(農文協、1990)の紹介があり、そこに「除草機押しを道楽にしている農家があり、活着後2、3日おきに合計10回以上押している。収量は平均反収を上回っている」とあったので実験すると、除草7回すると無除草より約3倍の収量があった。しかし、稲作関係の専門書には多数回中耕除草の記載がない。そこで江戸時代には知られていたのではと思い、日本農業全書(全73巻)を調べたところ、「除草回数が増えると収量が増し、米の質が良くなる」「子供を田んぼに入れるだけでいい」といった記述があった。
そこで、江戸時代の農法を生かすイネ作りの実験を行った。
- 育苗方法:露地でポット苗(プール筏育苗)
- 中耕除草:水田用カルチ+チェーン除草
- 中耕除草回数:回数が増えるほど収量は増すが、4回以上~16回までは緩やかな増加で(6回をピークに以降はほとんど変わらず)、反収は450~500kg(7.5~8.3俵)。食味値も同様な傾向を示す
多数回中耕除草のメカニズム
土の中の窒素量を調べると、光が当たる土の表層部は増え、遮光すると減る。しかし深さ2mmより深いところでは露光区も遮光区も変わらない。土の表層部で、空気中の窒素を固定しタンパク質を作っているのは光合成微生物で、窒素量は約100g/10a/日程度。無除草だと土の表層部で窒素が固定されたら終わりだが、中耕除草すると、次々と窒素が土中に撹拌・混合され、徐々に分解されてイネの養分になっている。中耕除草はこの他にも、土を柔らかくし、土中の水の流れを良くし、除草ができ、新たに表面を形成するなどの効能がある。つまり、多数回中耕除草の本質は、反応の促進(=撹拌、混合、生成、分解)→イネへの養分(窒素)供給が増えることではないか。
コメつくりの要因は、①自然的要因(光、気温、水(雨))、②田んぼの性質と状態(場所、土の性質)、③イネの持つ特性なので、これらを総合的に判断し、最適な状況にイネをおけば、イネの持っている能力が十分発揮できる。このような総合化・最適化は、みんなで取り組み、共有できるオープンな場を必要としている。
因みに、江戸時代に学んだ成果は、粕渕辰昭・荒生秀紀『自然との共生をめざすコメつくり―江戸時代に学ぶ新農書―』という書籍になっている。amazonにも書店にもなく「自然栽培の朝日米 木村ワールド ONLINE SHOP」で販売しているので注文した。読了すれば紹介したい。