抑草技術に続いて、育苗についても初心に戻って学び直した。なぜ成苗か?の疑問が解けたり、気付き直した点があったので、これらに絞ってまとめる。
1.なぜ成苗が必要なのか?
農薬を全く使わないためには、無加温の自然育苗で草丈が15cm以上で、5cm程度の湛水管理をしても水没しない苗であり、田植え直後に発生するアオミドロなどの緑藻類に倒されない苗でなければならない。
それは、温度をかけて草丈だけ伸ばしたような徒長苗ではなく、比較的低温で育苗したもので、窒素過剰でなく茎葉のしまった葉色の淡いやや黄緑色で、細胞壁が厚くて堅い草丈16cm程度の苗ということになる。こうした苗は4.5葉以上にならないと確保できないので、1箱60グラム以下の薄蒔き(理想的には40グラム)をして露地で苗をじっくり育てることが必須条件になる。
★今年はJA指導の下で80から100グラムに増やしたが、来年は逆転させて60グラム以下に減らそうと思う。
薄蒔きしても欠株の出ない精密播種機が必要になるが、稲葉光圀さんらによって開発され市販されている。
★今は手播きなので、この播種機を調べてみよう。
2.露地でプール育苗
播種作業が終わったら、午前中に潅水作業を終了し、3時ごろまで太陽の光を当てて温め、ラブシートとシルバーポリをベタ掛けし保温する。露地育苗の場合、雨が降るとシルバーポリの上に水溜まりができるので、必ずミスト機などを使って吹き飛ばす。水がレンズになって芽を焼いたりするので。
5~7日経ったら芽が出始めるので、第1葉が伸長したらシルバーポリを除去する。但し、まだ発芽が十分でなく、表面が乾いていたら潅水して、シートを掛けたまま保温を続けば、2~3日で一斉に発芽してくる。
シルバーポリとラブシートを除去したらすぐに水を育苗箱の上端まで入れ、そのままプール育苗に入る。このとき雀の被害が心配されるので、寒冷紗か防鳥ネットを周辺に張る。
★2018年に導入したシルバーポリとラブシートが合わさったシートが今年で3年経過し、ラブシートは土が付きドロドロで破れてしまっており、シルバーポリもところどころで穴が開いている状態なので、来年は新しいシートに切り替える必要がある。手持ちのシートもあるので使いまわすか、新規購入するか検討したい。
プール育苗の期間は25~35日にもなる。水ぐちに田んぼの土をスコップで1つ入れ、土壌微生物を繁殖させれば、水が腐る心配はない。過保護な温度管理は苗の環境適応力を弱めるだけなので、できるだけほったらかし自然に任せること。育苗後半は水位を育苗箱すれすれに維持し、株元の温度が上がらないようにする。水温が高くなると伸長帯が伸び徒長する恐れがある。
3.移植作業の注意点
- 成苗は根張りが良く苗の軸も太くなるため、移植爪で苗の根際を切られたり、根を完全に切り取られるといった損傷が激しくなる。この原因は苗載せ台の苗落下防止の金具が苗をしっかり押さえ付け、爪が苗をかき取るときに苗が左右に動けなくなっているため。従って、この落下防止金具を全部外してしまう必要がある。特にブロック爪で損傷が激しく出るので、できれば箸爪に変えて使うようにする
- 粘土質の床土の場合、爪にドロが付き植え付けがうまく行かないことがある。田植え前日からプールの水を抜き、少し乾かしてから移植する
- 苗のかき取り回数を20回または18回に調整し、植え付け本数を1株2~3本植えになるようセットする