2/1・2 nico10周年祭り:野口勲さん講演会

米作り

上の写真は、賑わうnico10周年祭りの屋外会場。

木村秋則さんに次ぐ目玉、野口勲さんの講演会をまとめておきたい。2/1午後、6時間に亘るノンストップ講演で、画像データ80枚以上も駆使してのとんでもなくタフで、「雄性不稔のF1種が危ない」というディープな内容だった。かいつまんでまとめたい。

野口勲さん

野口さんは、親子3代にわたり在来種・固定種の伝統野菜のタネを扱う種苗店・野口種苗研究所の代表。今ではこれらのタネで栽培されることはほとんどなく、ほぼすべてF1種に変わっている(下を参照)。

F1種に変わった理由は下にあるような利点にある。味の良さや栄養価の高さを捨てて、市場流通面での利便性や利点を優先したからだが、戦後の復興と経済成長には大きな役割を果たした。

F1種(一代雑種)の利点は、メンデルの法則にあるように、一代目は対立遺伝子の片方だけが優先して現れやすいという性質からきている。最初に現れやすい方を「優性」、逆を「劣性」と訳されたので、遺伝子に優劣があると誤解されてきたが、本当は遺伝子的に蓄積の多い方が現れるということであって、今後は「顕性」「潜性(せんせい)」と呼ぶように、日本遺伝学会は提案している。

さて問題は、F1種をどのようにして作るかだが、次の4種類が段階的に開発されてきた。共通するキーワードが「除雄」。野菜は雌雄同体が多いので、雑種を作るには、まずは自家受粉しないよう雄しべを取り除く必要がある(その後他種の花粉を付ける)。

「除雄」の方法の第一が「蕾のうちに雄しべを取り除く」というもの(下のナス科のトマト)。

第二が、雌雄異花のウリ科の西瓜での「除雄」で、雄花を開花しないよう取り除くなどする方法(下)。

第三に、アブラナ科のように自家受粉しにくい性質(自家不和合性)を利用して「除雄」するもの(下)。

最後、第四の方法が「雄性不稔」を利用する方法で、野口さんが最も伝えたいメインテーマ。上の画像にあるように、赤色が「雄性不稔」を利用した雑種作りの方法で、今や世界の主流。第一~三までが「除雄」するのに人手に頼っていたが、この「雄性不稔」は最初から「除雄」されているタネ、つまり人間でいえばインポや無精子症にあたるカタワを利用する方法で、それまでの緻密で大量の人手が不要になるという画期的な方法。

そして雄性不稔は母系遺伝するので、1つのタネからいくらでも作ることができる。

では、どのようにして雄性不稔のタネができるのか?を探ったものが以下の画像だが、ミトコンドリアの何らかの異常が原因らしい。

今や食べている野菜のほとんどが、このようなミトコンドリア異常の「雄性不稔」食べ物なのだが、食べた動物のミトコンドリアは異常にならないのだろうか?(何らかの異常はあるはず?)、というのが野口さんの問題意識。ミツバチの大量失踪現象や人間の精子の数が年々急激に減少している問題など。しかしこれらは世界の誰も解明していないので、野口さんの仮説になる。

以上、F1種(交配種・一代雑種)を見てきたが、最先端はゲノム編集(人為的にDNA配列の改変をする技術)で雄性不稔植物を作ることが研究されているとのこと(下の画像)。

遺伝子組み換えといいゲノム編集といい、(欧米主導の)世界はやばい方向に行っているように思う。それに対して、日本には自然や人間の破壊から救う自然栽培がある。広めていきたい。

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