1/16岡本よりたか氏の『続・無肥料栽培を実現する本』出版記念講演会が三田市まちづくり協働センターであったので参加した。
前半は出版本の内容についての概説で、今後どこかで触れることになると思うので省略し、今回は後半の仲吉京子さんとの対談から仲吉さんの取り組みをまとめておきたい(上の写真の左が岡本よりたかさん、右が仲吉京子さん)。面白く超多忙の毎日とのことだが、農業を始めて3年ほどで、僕ができたらいいなと思っていた理想を早々と実現されており、そのスーパーさにノックアウトされてしまった。
仲吉京子さんは、クリニック経営はじめ医療業界で経験25年、マクロビオティック料理の「メディカルシェフ」資格をもち精進料理教室「日々是好日」を主宰、3つの流派のヨガ講師というスーパーウーマンだが、農業への思いが強くなり、2014年に神奈川県相模原市の耕作放棄地を自らで開墾し就農(マイナビ農業とThe CAMpusの紹介記事参照)。
現在田んぼと畑は1町歩まで増え、野菜は70種類。田と畑を両立するため田んぼは無除草、代かきに秘密があるとのこと(このことは田畑の両方をやる際の絶対条件でよく分かる、僕の理想)。
栽培の概要
畑は黒ボク土(関東の火山灰土)で豊かな土壌だが、草や循環型の肥料で苦労している(田んぼがあるので米ヌカは自給)。毎年やり方を変え、小さい作物を良しとせず大きくする工夫をしている。
「土寄せ」は肥料をやるのと同じくらい効果がある。大豆、ムギは絶対必要、ブロッコリーやキャベツもやることある。このような手間をかけることで大きくする。ただ今は1町歩まで増えたのでマルチを導入。土寄せできなくなったので、マルチの上に土をかぶせた。
虫はいる、例えばニセテントウムシは手で取って瓶に入れた。カメムシはアルコールに漬けて、その液を振ると虫除けになる。
病気はない。草が守ってくれている。ホウレンソウは酸性土壌なのに、草の中に埋もれてよく育っている。ただ収穫は草が邪魔で少し大変。3反のスギナを全部刈り取って、軽トラで3往復して運びこんでトマトのマルチにした。成果は非常に良かった。ダンゴムシだらけになったが悪さはしない。
獣害:熊以外は全部出る。対策として周りはネットなどを張っているが、仲吉さんはそれは嫌なので、彼らと友達になるなどして獣害を防いでいる。例えば鳥とは友達になり被害はなくなった、ハクビシンにはエサを与え作物と区別させた。しかし、友達になれなかったら、播種時期をずらして防ぐ方法がある。それでも収穫時期はあまり変わらない。また、受粉の仕方が分からないので、畑の周りに蜂箱を置いている。
販売先
- 宅配(月2回):一人では品数が足りないので無農薬グループでやっている
- マルシェ(月2回)
- ネット販売
- 飲食店:夜はお店に営業に行っている
ともかく「売り先を決めてから作付けする。逆はダメ」。これに関しては岡本よりたかさんも「作ってから、どこに売ろう?」ではダメ。作るのはあくまで手段で、目的は売ること。
定年退職者でお金に困っていない方が自然栽培してただで配ったり、直売所に低単価で出されたりするが、価格破壊されて他の生産者が困る。実際、一般の農家さんがそのあおりで廃業されたケースがある。絶対やってはいけない。先に売り先を決めて、個人名で、まっとうな値段で売って欲しいとのこと。
CSAを目指している。CSA(Community Supported Agriculture)は「地域支援型農業」と呼ばれ、消費者が生産者に代金を前払いして、定期的に作物を受け取る契約を結ぶ農業のこと(マイナビ農業参照)。海外では普及しているが日本では少ない。カリスマ農家が少ないからかもしれない。情報発信して、お客さんが付いて、先行投資してしてもらう。仲吉さんはFBをもの凄い頻度で更新されている。お客さんの方も栽培過程を知って食べるとエネルギーがよりもらえる。
穀類にはまっている。穀類は加工して保存できるところが野菜より優れているので、田んぼを増やしたい。味噌は当然ながら、さらに大豆や小麦で醤油を作りたい。「1億総醤油作り運動」を日本全国に広めたい。農作業や加工などの手仕事が日本人の心を取り戻すのに有効なので広めたい。
以上、仲吉さんは医や食についての経験や造詣の深さが基礎にあるとはいえ、短期間で無肥料栽培を事業化し、次々と新たな構想に向けて邁進できる照準力や実行力に圧倒されてしまった。実行力や実現力の源である「志」や「決意性」のようなものが強固だと思われ、僕に圧倒的に不足しているものではないかと猛省。真似びたい対象がまた一人できた。
おまけ:会場となった三田市まちづくり協働センターにおける当日の催し物一覧が下の写真だが(当講演会は真ん中あたりにある)、上から4つ目の『玄米炊き方教室』は仲吉京子さんが講師の自らの無肥料無農薬玄米を使った炊き方教室。(多忙で徹夜だったらしい。)
