自然栽培の田んぼ

米作り

コウノトリ米と自然栽培米という対照的な農法で米作りしているが、コウノトリ米はJAマニュアルがあるが、自然栽培にはない。木村秋則さんが地域や田んぼによってやり方が異なりマニュアル化できないと考えられているためだが、木村さんが実践されている農法が書籍『百姓が地球を救う』に書かれているのでまとめておきたい。以下、抜粋。

コウノトリ米は、冬期湛水(または冬みず田んぼ)といって冬の間もずっと水を張る農法で、300年ほど前から続いている非常にユニークな農法。春までの間サギやマガン、ハクチョウなどがやってきてエサ場やねぐらになる。またイトミミズが土壌のトロトロ層を作る。いずれも生きもののフンのお陰で養分豊富な土ができるという考え方。

それに対して、自然栽培の田んぼは真逆で徹底的に乾燥させる農法。特に春時点での乾燥が決定的に重要。というのは、木村さんはどの田んぼでも春の時点で秋の収量を的中させることができ、それは春に一度行う耕起がすべて(秋の収量)を決定していることに気づいたから。

まず土が乾いていること。それも湿った土を耕してから乾かすのはダメ。乾いた土を耕すのがポイント。

土の中には湿気を好むバクテリア、乾燥を好むバクテリアなど様々なバクテリアがいるが、イネが利用するのは乾燥を好む「好気性菌」。実はイネは陸(おか)の植物なのだ。原種は乾いたところで生活していたため好気性菌と相性が良く、この好気性菌の活動を促すのがコツ。これを無視すれば後で挽回することはまずできない。

春に土が十分乾燥してから、土を粗くゴロゴロに耕す。小さくても10cmくらいの大きく耕起し、土の間に空間を作り、さらに良く乾かす。この後に水を入れると、土壌有機物の一部から低分子の有機成分が溶解し、微生物により分解されて、イネに有益な無機態窒素が増加する。これを「乾土効果」という。

ワラが黄色から灰色になっていれば耕起して大丈夫。黄色は生ワラなのでそのまま耕起すると初夏の気温上昇とともにガスを発生させ、イネの生育に悪影響を及ぼす。また田植えの時に水に浮いて邪魔になる。灰色のワラは風化によってできる成分が微生物に利用しやすく、田植えの時も水に沈んで邪魔にならない。

コナギなどの雑草も耕起前の土の十分な乾燥でかなり抑えることができる。土を乾燥させないで耕起すると、土が力を十分に発揮できないばかりか、7月半ばを過ぎると除草のために何度も田んぼに足を踏み入れることにつながり、イネの根っこを切ってしまう恐れがある。

粗く耕起した後、次に注意するのは「代かき」。代かきは田植えのおよそ3日前に水を張り、土に十分滲み込ませてから行うが、一般的には水を土の表面まで薄く張って、地中15cmくらいの深さまで代かきする。しかし、木村さんは土の上に4~5cmくらい厚く水を張る。多目に水を張ることによって耕起したときの粗い土の塊が先に沈み、その上に細かい土が被さる。代かきするのはこの表面だけ。土の上部3割ぐらいを浅く行い、下の層は粗く少しゴロゴロ状態が残るくらいにとどめる。

あんこを練るような代かきをすると土に隙間が無くなり空気が入らず、酸欠状態になる。すると、イネの根本あたりから新しい芽が出て株分れする大切な分けつ時期に、田んぼからガスが発生する。木村さんのように、田植え作業に支障がない程度に粗く代かきすると、土の中に酸素が行き渡り、おいしいおコメになる。

一般栽培では夏を迎えるころにガス抜きを行う。稲藁を入れているので分解しきれないアンモニアがガス化して地上に出てくる。前年の稲藁が腐敗してメタンガスを発生させる場合もある。そこで田んぼから水を抜いてガス抜きをする。水がなくなると土がひび割れて根が切れる。するとイネは「新し根を出さなくては」と自らのエネルギーを根に集中させるという成長作用が起きる。「さぁ、これから新芽を作るぞ!」と一生懸命になる時期に、根作りに精を出し、コメ粒作りを疎かにしてしまうため、痩せて細長くなる。

自然栽培は、気温が高くなるとガスの発生も多くなるので、水を溜めず入りっ放し出しっ放しの状態にする。水抜きをしないため、土が乾いて根が切れることはなく、イネはコメ作りに集中できる。結果として、自然栽培のおコメは一粒一粒が丸く楕円形で体積があり、一般栽培と比べて一穂当たり30粒くらい数が少なくても収穫したときの重さは一緒になる。

地元(青森)では8月のお盆を過ぎると、一般栽培の田んぼでは水を切る。収穫に向けてコンバインを入れるため、水を抜いて土を完全に乾かす。8月末~9月上旬をもってイネは水を吸うのをやめるので水を抜いても大丈夫。

一方、自然栽培のイネは9月に入っても水を吸い続けるパワーを秘めている。

水を張る量:教科書では、東北や北海道の寒い土地では深水管理、冷害の恐れがないところでは浅水管理と教えている。しかし、イネは「最低ここまで水を入れてください」という印を自ら付けている。イネの根本の1枚目の葉っぱと2枚目の葉っぱの間に、茶色がかった横縞が出ており、この線が「これ以上欲しくありません」という意思表示である。

自然栽培は病気が少ない:温度が上がっていくと一般栽培のイネは「いもち病」が心配になってくる。しかし自然栽培のイネは100%起きない。2010年は稀にみる高温のため、よく肥料を施した一般栽培のイネは無効分げつ含めてどんどん分げつした。その結果、イネ同士の隙間が無くなり日当たりや風通しが悪くなったために「いもち病」にかかった。しかし自然栽培のイネは必要な時に養分を吸収しているため無駄は分げつはしない。いもち病になりようがない。

自然栽培のイネにはセンサーがある:自然栽培のイネは出穂のスピードや花の咲き方が一般栽培とは違う。一般栽培のイネは、晴れだろうが雨だろうが、暑かろうが寒かろうが、天気に関係なく肥料の力によって押し出されるような感じで穂を出し、全部出てからを咲かせる。しかし自然栽培のイネは気温をキャッチするセンサーがあるのか、寒いときはじっとこらえて成長を止め、暖かくなって、23℃~25℃を感知すると一気に穂を出して、出た穂はすぐに花を咲かせる。

木村さんの田んぼの平均収量は7.5俵、一般栽培は10俵は獲れる。しかし1993年に東北地方と北海道を大冷害が襲った時、木村さんの田んぼは7.8俵、一般栽培はほぼゼロだった。この年は8月になっても冷たい風が吹き、真夏なのにストーブを点けたほど。例年なら出穂の時期だが一向に出てこない。お盆の頃に珍しく晴れた日があった。気温は20℃を超えないのに、一般栽培の田んぼは一斉に稲穂が出た。しかし木村さんの田んぼはまだ出ていない。

その夜は珍しく夏らしい気温になり生温い風が吹いた。すると出穂し始めた。日が暮れてから出穂して開花するなど、これまで聞いたことがない。「イネは生きているんだ。」翌日は晴天になり、木村さんの田んぼのイネは一気に出穂して花を咲かせた。しかし一般栽培の田んぼは開花しなかった。自然栽培のイネは植物としての本能を発揮する。大自然の法則に沿って成長するため、冷害に強いのではないか。

自然栽培の心得 五か条

  • その一 土づくりには3年かかると心得ること
  • その二 生産者によって収穫のばらつきがあると知っておくこと
  • その三 これまでの農業の常識を捨てること
  • その四 一般栽培や有機栽培の実施者とのトラブル回避に心をくだくこと
  • その五 自らが確立した技術をひとり占めせず、一切隠さず伝えること
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