1/26のと里山農業塾(自然栽培野菜コース)№2 畑の準備

野菜作り

午前の米づくりコースに続いて、午後の野菜コースの研修内容「自然栽培の畑の準備」をまとめたい。場所は、夜に交流会がある国立能登青少年交流の家に移り、講師は合同会社NICE FARM 廣和仁(ひろかずひと)氏。

廣和仁氏の紹介:H21年木村秋則さんの『リンゴが教えてくれたこと』を読み脱サラ、農家になる。H23~25年石川県羽咋市の「木村秋則自然栽培実践塾」の塾生となり木村秋則さんより自然栽培(米、野菜、果樹)を学ぶ。H26年より「のと里山農業塾」野菜コースの講師を務める。3年前に富山県氷見市石動山のふもと(標高200m、棚田100選)に移住。限界集落で耕作放棄地50%以上、耕地は小さく棚田(百選)、水を引くのも大変、獣害もあり、耕作は非効率。御子息がアレルギーで、アレルギーでも食べられるものを将来的に残すという志をもつ。H29年6月固定種野菜が食べられるお店「たねのわ」オープン。

自然栽培とは

農薬、肥料、除草剤を使わない。しかし放置栽培ではない。作物が育ちやすい環境を作ってやることが大事。自然の草木が参考になる。固定種で栽培。固定種はF1種に比べて、生育が遅い、病気に弱い、収量が少ない、自家採種できる、という特徴を持つ。

何故肥料なしで育つか?答えは山を見ればわかる。すべては自然が教えてくれる。山の土はふかふか、ツーンとした匂い、わずか1gの土の中に60億の微生物が生きている。

山の土は上から積もっていく。だから木村さんは「耕すときは浅く、粗く」が口癖だった。有機物を土の中に鋤き込むとガスが発生し、作物の根がやられてしまう。

肥料の行方:作物に吸収されるのはわずか10~15%、雑草14%、土の中に残留(雨で圃場外へ流れ出る)14%、ガス化60%。大部分がガスとして空気中に蒸発、これが亜酸化窒素となり(CO2の310倍の温室効果を持つ)オゾン層を破壊する。

廣氏は繰り返し「自然栽培は難しくない、誰でもできる。生業にするのが難しいだけ(但し自然栽培の野菜は1.5~2倍の値段で売れる)」と述べられていた。

杜の園芸 矢野智徳(やのとものり)氏「大地の再生」の紹介:自然栽培vol4私の森.jpを参照。

まずはじめに~場所の環境を把握して⇒その場所に適したものを栽培する

周辺環境や地形(地下水脈、日当たり、風の通りなど)、土質(粘土質または砂質?)、そして最も大事なことは、どんな草が生えているか~これですべてが分かる。

エンドファイト=作物を守る共生微生物。生きている植物体の組織や細胞内で生活する生物のこと。成澤才彦氏(農学博士)の『エンドファイトの働きと使い方』の紹介:同じ作物の栽培を続けると、特定の生物だけが増えてしまい、連作障害を起こす。よって混植等する。

春、雪が解けてまずすること①=土を50cm掘り、深さ10cm間隔で温度を測る:深さ20~30cmのところに硬盤層(肥毒層)があると、作物はうまく育たない。その下には過去4000年分の肥料分が存在していることが、杉山修一氏(弘前大学教授)によって明らかにされている。耕作放棄地には基本的に硬盤層がないので、自然栽培に適している。

春、雪が解けてまずすること②=水脈整備=土を良く乾かす:晴れた日が続き、表面が割れるくらい良く土が乾いてから、浅く粗く起こす。土の中に空気(酸素)を送り、好気性菌の働きを最大限に引き出す。そうすると地温がUPする。春はこの作業が最も大事!

マルチを張っても地温が上昇し、抑草になる、さらに水分の蒸発を押さえる効果がある。

畝の上は土を裸にしないで、草などの有機物がある方が自然。畝の間の溝にも草が生えている方が良い。だからマルチはある意味自然に近いと言える。

圃場の四週および畝の間(溝)に排水溝を掘り、水はけを良くする:四隅および畝の間(溝)の数か所に深い穴を掘っておけば、水はけはより良くなる。

雑草どうする?

育苗後移植する場合は、草は問題にしなくてよい。直播の場合は草に負けるので、草刈りが必要。ある程度大きくなるまで生やしておき、草の枝を曲げた時の頂点(根元の固いところと先の柔らかいところの境界)部分で刈り取る。剪定と同じ考え方で、こうすれば根を傷めず残すことができる。

麦と大豆による土づくり~硬盤層があっても2~3年で良くなる

大豆に根粒菌がびっしりつけば、チッソが少ないことを意味している。ほとんどつかなくなればチッソが多くあるので、大豆を播く必要はない。野菜と大豆を混植する場合、早生の品種を選ぶ。黒豆は湿地を好み、根粒菌が付かないので、土づくりには意味がない。

麦は硬盤層をも突き破り土壌をリセットする。但しエンバクはリセットしない。秋播きが基本だが、早生ならこれからでも間に合う。麦ばかり作り続けると、栄養分を吸いつくすので、砂漠化してしまう。注意!

ゲーテの言葉:雑草を育てなさい。麦を育てなさい。大豆を育てなさい。そうすれば永遠に農業は可能である。

耕作放棄地1年目はジャガイモが最も簡単:詳細略

おまけ:研修会前日は、ちりはまホテルゆ華に泊った。木村秋則さんも宿泊されたようで、ロビーに直筆の色紙が展示されていた(下の写真)。色紙には『社会のために 役に立つ生き方』と直筆されていた。


もう一つおまけ:青少年交流の家で宿泊が同室だった塾生から、開塾式でオリエンテーションをされた栗木氏から紹介された書籍として、『土と内臓(微生物がつくる世界)』の紹介を受けたとのこと。僕も読もうと思うので記録しておく。

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