佐々木正『生きる力 活かす力』

研修・読書

100歳になる現在も(2014年当時)、経営者、技術者、学者などから相談を受け忙しい日々を送っている、電子工学の父・シャープ元副社長が、多くの成功と失敗の経験をもとに、若い人に伝えておきたいとまとめた著書。もともと日本人の心に根付いている「共創」の思想ーお互いの信頼関係を築き、お互いの思想を尊重し、そこから新しいものを共に創りあげるーを大切にしてほしい。そうすれば日本は必ず活性化できるはずとのメッセージは、これから生きていくこと、農業経営していくことに非常に大きな指針になりました。一部ですが、抜粋紹介します。

役割・ミッション:人間の細胞は60兆個もあるそうだが、みんなそれぞれが大切な役割があるんだね。感動するなぁ、役割があるということは―。それが「生きていく」ということ。ただそのとき、自分一人だけでやろうとしないと楽になるよ。21世紀は、他人と一緒に創り出す「共創」の時代だ。

独創から共創へ:一人の俊英の「独創力」には限りがある。複数の英知が集う「共創力」は無限だ。これが日本再生のキーワードになるぞ。

正しい発想法の順番:「どうすれば人間が幸福になるか」という哲学が先にあって、それに技術や開発がついていく。つまり、正しい発想法の順番は、①人々が幸福になる商品は何か。②その商品をつくるにはどんな技術が必要か。③その技術を産み出す原理や素材は何か。

語り合う「場」をつくる:「共創」を始めるには、まず語り合える「場」が必要だ。その「場」はどんなところでも構わない。大切なのは性別も年齢もキャリアもいっさい関係なしが条件。

どんな場でも、相手に寄り添う謙虚さが大事:「場」で議論するとき、「実るほど頭を垂れる稲穂かな」という基本を忘れたくない。相手を尊重し、美点・長所を見つけようとすれば、「共創」の「場のクオリティ」を高める。

先人との繋がり:どんな偉大な発明も、先達の理論や発見の積み重ねの上になされている。何事も、先人の偉業との「共創」であることを忘れてはいけない。

価値観の不思議:異種だからと排斥してはいけない。異質なものを組み合わせるから面白いんだ。価値観の違うものを結びつけると、新しいものが生まれる。

脳を退化させない:外界と隔絶され、情報を遮断されると、脳は急速に退化していく。人間は一人では生きられないようにつくられているんだね。

異分野にヒントがある:人は無意識のうちに得意な分野にヒントを求めがちだ。ところが、ヒントは「異分野」に転がっていることが多いんだ。

天才とは1%のひらめきと99%の努力だ:生涯に1000件以上もの発明をしたエジソンの言葉。

夢に年齢は無縁:新しいことにチャレンジするのに最も必要なのは「仮説」とそれを実現しようとする「情熱」。「仮説」とは「夢を抱く」こと。夢を抱くことは、「年を取っているから無理」ということはない。

モノコトづくり:「使いやすい」「安心できる」「便利だ」などという製品は、今の時代、当たり前のモノづくり。一方「モノコトづくり」は、消費者に喜んでもらうものをつくるために、社員と夢や志を共有し、社員の持つ潜在能力を引き出し繋ぎ合わせ、組織の力へと変える。このような共創精神でつくり上げると、「感動」や「物語(ドラマ)」などの「コト」が生まれる。その「コト」が、今の時代、社員からも消費者からも求められており、それが「ヒトづくり」にもなる。

リーダーの条件:部下に信頼されるには、有言実行して目に見える結果を出すこと。これに尽きる。結果を出せば部下は近づいてくる。そのとき大切なことは、周りの人への感謝の気持ち。

企業経営は、「技術力」「資金力」「生産力」「販売力」が揃って初めて成り立つ:誰とどういう思想で組むかの「共創」も大事なヒントになる。

日本式経営の大きな特徴の一つ「先義後利」を思い出せだせ:「道義をいが優先させ、短期的には損をしても先々大きな利益を得る」という教え。これと正反対なのが「アメリカ式経営」。目先の利益を追って、基幹産業で日本に駆逐されることになった。今の日本企業はアメリカと同じ轍を踏んでいないか。

世の中の役に立ちたい:人は誰でも生きている限り、世の中の役に立ちたいという思いが創意工夫を生み出すんだ。生きがいを持てば、元気になれる。

「目で見えないもの」に挑戦:これからはハードウェアなどのモノづくりから、「目で見えないもの」へとシフトしていく。人の心を感じ取ることや、「気」とか「匂い」もそう。20世紀は「科学の世紀」と呼ぶにふさわしい長足の技術進化を遂げたが、がんのような病がいくつもある。これからの時代は「環境因子」が脳や体に与える影響を調べて、それらの治療法を確立することが求められる。

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