モンベル7つの決断

研修・読書

籾摺りまで終わりホッとして、かねてより気になっていた辰野勇氏の『モンベル7つの決断』を読んだ。今後の農業人生をどう過ごせばいいのか?のヒントになればと思い、モンベル創業者の経営哲学をワクワクしながら読み進めた。

はじめに―集中力・持続力・判断力、そして「決断力」

はじめに何故「決断」かだが、辰野氏が名門大学に多くの卒業生を送り込んでいるある私立高校の理事長から、勉強のできる生徒には共通点があり、それは「集中力と持続力と判断力」であり、「それらの力は人間が生きていくうえで最も大切な『生きる力』だが、その力を身につける方法は無限にある。勉強もその一つに過ぎず、スポーツや趣味や仕事でもその道を真剣に求めればそれらの力は身に付く」という話を聞き納得した。

この話を最も信頼する顧問弁護士にすると、「もっと大切な力がある。それは決断力だ」と言い切った。確かに、集中力と持続力と判断力を持って勉強や仕事に取り組んだとしても、決断しなければ意味がない。実際登山中に「雨が降れば危険な状態になる可能性がある」と判断できても、「登り続けるのか、下りるのか」の決断をして行動に移さなければ命にかかわる。

辰野氏は、28歳でモンベルを創業して以来30年の間に(1975年創業後2006年当時)、7回の決断があったと言う。それは「将来を見据えて、あえて困難な道を選ぶこと」だったという。

7つの決断

  1. 28歳、資金ゼロからの起業
  2. 小さな世界戦略
  3. パタゴニアとの決別
  4. 直営店出店と価格リストラ
  5. モンベルクラブ会員制度の発足
  6. アウトドア義援隊
  7. 山岳雑誌「岳人」発刊

モンベルの未来イメージ

辰野氏は、会社を創業したとき30年後のモンベルを想像していた。商品企画や売上規模、ガイドサービスなどなど ・・・・。今ほぼそのイメージに近い会社に成長できた。もしこの先30年後もモンベルが存続し続けているとしたら、その条件はたった二つだけ。

一つ目は、30年後もモンベルが社会から必要とされ続けていること。二つ目はその事業活動の採算が取れていること。進むべき道を見誤っていないかを自己判断するバロメーターは、モンベルクラブ会員の支持が得られて、年会費を払い続けてくださるかどうか。

おわりにー人はなぜ冒険するのだろう

辰野氏は40代の前半まで、山や川などの自然を舞台に命がけのリスクをともなう冒険に夢中だった。多くの仲間を山で失い「明日は我が身」と覚悟を決めていた。「人はなぜ冒険するのだろう?」と常に自問自答してきた。

アメリカの「冒険大賞」の選考委員の一人、ミシガン大学の心理学の先生は、「せいぜい全人口の0.5%足らずの、突然変異のような『冒険心』を持った人間を神様が作られて、人間の限界を切り開いてきた」という。未知への好奇心と探求心が彼らを動かしてきたに違いない。

「起業家」もそんな「冒険家」と共通する精神性を持ち合わせている。ゼロから事業を築き上げる作業は、まるで前人未到の岸壁に挑む冒険家のそれに似ている。計画を立て、最悪の事態を想定しながらなすべきことを粛々と実行していく。

「起業」も「冒険」も、行動以前にもっと重要なのが「目的」を明確に自覚すること。では何を目的に会社を経営するのか?自問自答を重ねた辰野氏の答えは「事業の成功ではなく、人生の成功」。「世界で一番幸せな会社」。

最後に読者に送る辰野氏のメッセージは、Do what you like.Like what you do.(好きなことをやりなさい。そして、やっていることを好きになりなさい。)

自分の選んだ道を歩き続けることができる幸せに感謝する気持ちが、人生を豊かにしてくれる。

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